2023年女子サッカーワールドカップが開催される前は、こんなエキサイティングな試合をするチームだということを知らない人が多かっただろう。
歴代のなでしこジャパンでも最強とも言われている今大会のチーム。過去のなでしこジャパンを振り返ってみよう。
2011年女子ワールドカップ優勝の呪縛
2011年ドイツ大会で優勝し、2015年カナダ大会で準優勝だった、なでしこジャパンですが、2019年フランス大会ではラウンド16で敗退でした。
2015年大会までは2011年大会の優勝メンバーがほとんど残っていたので、決勝まで進む戦力がありました。しかし、決勝ではアメリカのリベンジに破れ、連覇を達成することは出来ませんでした。
このチームの終わりを告げるような大会でした。4年後は誰が残るのだろうか。
生まれ変わらなければならない、なでしこジャパン。
レジェンド澤穂希がいない「なでしこジャパン」
バロンドールを受賞したレジェンド澤穂希さん。日本に澤穂希さんがいなかったら女子チームの活躍はなかったでしょう。いや女子チームは活躍しても2011年大会の優勝を手にすることはなかったかもしれない。
2015年のワールドカップ終了後、澤穂希選手が引退しました。長い間お疲れ様でした。
澤さんは引退することによって、新生なでしこジャパンの道を作れとメッセージを送っているように見えました。
ここから本格的に女子サッカーの世代交代が始まりました。
2019年フランス大会のメンバーはまさに今大会の2023年メンバーと2015年メンバーのミックスという感じである。そこに澤穂希はいません、あらためて新世代を感じました。
2023年チームはU20W杯優勝チームの進化系
新生なでしこジャパンとも言える2019年女子ワールドカップメンバーは、2015年チームを払拭したものでした。
2018年U20女子ワールドカップでなでしこジャパンは優勝しています。監督は池田太氏。すでに2023年を見据えていたかのようです。
植木理子、長野風花、宮澤ひなた、遠藤純、高橋はな、南萌華らが2023年チームメンバーとして活躍しています。まさに池田チルドレンですね。
佐々木監督から高倉監督へ世代交代のバトンタッチ
2016年、2011年優勝チーム監督の佐々木則夫さんが退きました。
後を継いだのは高倉麻子監督でした。高倉監督の使命はチームの若返り、若手育成、ベテラン組の起用、なによりも2度目のワールドカップ優勝でした。
高倉監督は、若手育成という課題がありながらチームが負けることを極端に嫌っていました。負けず嫌いの高倉采配もと言われていました。
高倉なでしこジャパンは、2015年準優勝メンバーの力に頼らざるを得ない日々が続きました。
完全に過渡期と言えます。
ベテラン組のパフォーマンスは徐々に衰えていき、若い選手の台頭にはもう少し時間がかかりました。
そんな試行錯誤を続けた高倉監督のワールドカップ参戦は2019年大会です。
決勝トーナメントに進んだものの、初戦で敗退しました。その悔しさを知るメンバーが今大会のメンバーにもいます。2023年大会の決勝トーナメント1試合目のノルウェー戦で決勝点を決めた清水梨沙もそのひとりです。
新世代幕開けの監督交代
そして2021年に高倉監督が任期満了で退任し、池田太監督が就任しました。
監督の世代交代と言っても劇的に若くなったわけではありません。池田監督は高倉監督の2歳年下、ほぼ同期と言えます。
女子チームには女性監督が馴染まないのか、もと代表選手だった高倉さんは選手たちに過大な思い入れがあったのかも知れません。
佐々木監督や池田監督のように、男子代表としてもプロとしても華々しい活躍はないが、女子代表への過大な思い入れを持たず、世界の女子サッカーというモノサシで選手と接することがなでしこジャパンにはふさわしいのかも知れません。
池田ジャパンの特徴
2019年大会までのなでしこジャパンはとにかくスピードがありませんでした。そして決定力も乏しく、1点差で逃げ切るという戦いが多かったように思います。
キック力がないスピードがない、体格が小さい。だからショートパスを使ってボールを保持し、少ないチャンスを活かすという戦術が多かった印象です。
今大会には呼ばれなかった岩渕真奈選手も2011年大会優勝チームのメンバーでした。天性のドリブラーである彼女は2019年大会でも貴重な得点を上げています。
ドリブルはなでしこジャパンの武器ですが、スピードドリブルではなくテクニックのドリブルでした。
今大会のグループステージ、決勝トーナメントのノルウェー戦の4試合を見る限り、日本サッカーはスピードにあふれているチームに仕上がっています。
高倉監督時代のサッカーは自分たちにスピードがないから縦への攻撃は馴染まないという思い込みがあったのでしょうか。
池田監督のサッカーは、ショートカウンターに見られるようにとにかく前へ前へというベクトルを感じます。
その申し子が、植木理子、田中美南、藤野あおば、宮澤ひなたというアタッカーなのでしょう。
遠藤純もサイドを駆け上がりスピードとタフなプレーを見せています。
今大会ではじめてなでしこジャパンを見るファンにとって、いつの間にこんなに強くなっていたのか!という印象を持つかも知れません。
池田なでしこジャパンも2021年から2年間、改革とも取れるトレーニングと、クラブチームレベルの組織プレーに取り組んできました。
大きな大会では悔しい経験もしています。池田監督のベンチワークは明快で、選手の信頼も厚い。
高度な戦術を全員が実行できる理解力を持っています。
2度目の優勝カップを手にする日は近い。応援しましょう。
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