最近はサッカー練習法を紹介する書籍やDVDがたくさんありますね。僕が小学生や中学生の頃は情報が無くて「チャナディのサッカー」なんて本を読んでいました。(遠い昔…)
チャナディって誰?という方はググってみて下さいね。古書扱いで情報がありません(泣)
練習方法100選とかサッカー練習200など、とにかく数が多ければいいのかな?という本のタイトルが目立ちますね。
新人コーチたちは、本を買い込んだりYouTube動画を見たりしていろいろと練習に取り入れようとしています。勉強熱心で大変よろしいですが、練習メニューを選んだり決めたりするときに参考にして欲しいことがあります。
それは「子供たちに足りないものを補う内容か?」ということです。
チームレベルや子供たちのレベルにあった練習をすることが大切ってことですね。
それでも、どこから手をつけていいか分からない!というコーチもいることでしょう。
そんな方のために僕がむか~しむかし学んだ「3つの練習法」を紹介します。
ただし、1度の練習や1週間くらいで上達する方法ではないので念のため!
続ければ、8週間後には成果が出るはずです。
3つの練習方法 その1 サッカーは止める・蹴るが基本だ
3つの練習方法に絞るとなると、ボールフィーリングを身に着けようという発想になりがちですね。
ボールフィーリングとは、ボール感覚を養うことです。代表的なトレーニング方法は皆さんご存知の「ボールリフティング」ですね。
しかし、3つの練習方法に「ボールリフティング」は入っていません。サッカーの試合に直接役立つまでには時間がかかるからです。
ハッキリ言ってボールリフティングの練習は効果があります。しかし、試合で通用するようになるためには練習方法にコツが必要です。別の機会に紹介しますね。
練習方法その1はずばり「止めること・蹴ること」です。
サッカーはボールが蹴れなくては話になりません。目標に向かってボールを蹴ることです。インステップキックでもインサイドキックでも構いません。とにかく目標に向かって蹴れるようになることです。
そしてボールを蹴るためにはボールを止める必要があります。これをサッカー指導用語では「コントロール」と言います。通称は「トラップ」ですけど、日本サッカー協会ことJFAの指導は「パス&コントロール」略称「パスコン」です。
指導者の多くは「止める蹴る」という表現をします。止めること蹴ることが基本という事はほぼ全ての指導者が知っています。
なのに、止める蹴るの練習をすっ飛ばしてコンビネーションの練習などに精を出して、「上手く行かないなあ」なんて言います。
止める蹴るの練習方法をひとりでやるなら「壁打ち」しかない
このブログを読んでいる方は、指導者だけでなく保護者の方もいますよね。お子さんがサッカーをやっているという熱心なお父さんやお母さんです。
チーム全体で練習するなら2人1組で向かい合って止める蹴るを繰り返すことが「止める蹴る」の基本練習ですね。
多くのチームがやっていると思います。でも、この方法は効率がいいとは言えないのです。相手がミス(コントロールミス、もとい、トラップミス=トラミス)すれば、ボールを拾いに行くというロスが出ます。
それと、相手が蹴ったボールが自分の足元付近に来るとは限らないので、ここでもロスがでますね。
ウマイ選手同士ならミスは少ないと思いますが、そもそもそのレベルに達するまで何をやればいいかって話ですよね。
人間を相手にするからロスが出るのですが、壁を相手にすればロスが押さえられます。
壁は文句も言わずに向かってくるボールを返し続けてくれます。
強くければ強く、弱く蹴れば弱く、まっすぐ蹴ればまっすぐ返してくれますし、角度が悪ければ倍返しでボールが遠ざかります。
お金持ちのクラブやサッカーに理解のある学校なら、グラウンドのスミに「シューティングボード」という「ゴールの絵が描いてあるコンクリートの壁」が設置されているでしょう。
学校のグラウンドに野球のバックネットがあれば、下側がコンクリートの壁になっていますよね。
とにかく、安全が確保出来るような場所で「壁打ち」が出来る場所を探しましょう。
どうしても無いならお父さんが「DIY」で壁を作るか、頑丈なベンチを買って来て横に倒して座面にボールを当てるなど、工夫が出来るはずです。
硬い壁状でなくても、ネットに当てて跳ね返るグッズも市販されています。
「リバウンダー」で検索するとアマゾンやなんかでヒットしますよ。
練習のポイントは「蹴りやすいところに止める」こと
場所や道具を手にいれたら、止める蹴るを繰り返します。練習のポイントはたったひとつです。
止める時には蹴りやすいところに止めることです。
小学生の子供たちにこの練習をやらせると、足裏とかでピタッと地面に止めてから、2,3歩後ずさりして踏み込んで蹴るということをする子がいます。試合ではあり得ないキックですね。
立っている位置から前方に止めれば後ずさりしなくて済むはずです。ワンタッチで止めて次のタッチで蹴るというツータッチの動作が理想です。
右効きなら、右足で止めて左足を軸足にして踏み込んで、右足で蹴れば2タッチですね。
右足で止めて、左で蹴ってもよいですし、その逆でも構いません。
上達してきたら、止める位置を左右にずらせるようになるはずです。
練習のポイントは思ったところに止めることですが、練習の目的は「目標に向かって正確に蹴ること」です。
3つの練習方法 その2 対人プレーを身に着けろ
サッカーの試合では、ボールを持っていると相手チームの選手がかならず寄ってきます。なぜ寄ってくるのか?それはボールを奪うために寄ってくるのです!
ここに気づけばサッカーの練習方法の半分は理解出来るはずです。ボールを奪いに来る相手はボールを持っている選手に対してどうするでしょうか。
ひとつはボールに対して足を出してきます。足で奪おうとする訳です。サッカーですから足で奪うことはとても自然ですね。
ですが、ボールを持っている側の選手は奪われたくないのでボールを奪おうとする相手選手の足の動きを見て、ボールを移動させます。これがドリブルの始まりですね。
上手ではない選手、サッカーの試合に慣れていない選手は足だけで何とかしようとします。これが上達出来ない選手の特徴です。
コーチはここを見抜いて「足先だけでプレーしないように」と決まりきったことをいいますが、じゃどうすればいいのよ!って話ですよね。
相手にボールを奪われないためには、自分の身体(カラダ)を使ってボールを守るのです。同時に相手の足が届かないところにボールを動かします。
練習のポイントは相手に奪われないようにボールを運ぶこと
ボールを運ぶことをサッカーではドリブルといいますが、スペースをフリーでボールを運んでもドリブルですけど、僕はこのように相手がつきまとう状態でボールを運び続けることは「対人プレー」だと考えます。
サッカーは相手にカラダをぶつけてバランスを崩すことが許せされています。基本ルールはショルダーチャージと言って、ボールを持っていない選手がボールを持っている相手に対して肩と肩をぶつけることが認められています。
しかし実際のサッカーの試合では、肩だけでなく膝から腰から上半身から腕までいたるところを使っての接触プレーがあります。
手のひらで押す「プッシング」やゲンコツで殴る「ストライキング」など、明らかなファウルはダメです。小学生だとヒジを使ってしまう場合もありますがこれもファウルです。
ボールを持っている側が相手に対してカラダを当てたり、腕を広げて相手がフトコロに入ってこられないようにするプレーは行ってもいいプレーですし、小学生や中学生には積極的に指導していきたいプレーでもあります。
腕の使い方がウマイなあと思う選手やチームに出会うことがありますが、明らかにコーチがしっかりと指導しています。
奪いに来る相手から遠い足でボールを扱うという基本
惜しげもなく企業秘密を描いていますが(笑)この対人プレーは、サッカーをする上では基本中の基本なので、3つの練習の中に入れています。対人プレーと書いていますが、1対1のプレーと表現することもあります。
ボールを運んでいる状態、つまり、ドリブルしている時に相手はどのようにして奪いに来るからというと、並走してカラダをぶつけて奪いにくる訳です。
右か左のどちらからに並んでカラダをぶつけたり、ボールを止めようと足を出してくる訳ですが、この時に相手から遠い足でボールをドリブルすることが大切なんです。
小学生の場合は、左右両足が使える子はまだ少なく(大人になっても両足が使えない選手は多いです)右利きの子が多いと思います。(ウチのチームではなぜか左利きが多くて半々くらい)
利き足が右だからと言って、右から奪いに来る相手にボールを近づけることは「奪って下さい」と言っているようなものです。
利き足がどちらだろうが、相手から遠い足でボールを扱うことで、相手とボールの間に自分のカラダを入れることが出来ます。
このような1対1、対人練習はどうすればいいのか。詳しくは次の記事で紹介します。
3つの練習方法 その3 味方どうしでボールを持ち続ける
さて3つ目です。1つ目では、止める蹴る。これは自分とボールという関係ですね。
2つ目では、対人プレー。自分とボールと相手(敵)という関係になります。
3つ目では、味方が加わります。つまり、自分とボールと相手(敵)と味方という関係になります。
味方どうしでパスをしたり、ドリブルキープをしたりして、とにかく相手に奪われずに味方どうしでボールを持ち続ける練習です。
イメージがわかないかも知れませんが、鳥かご(ロンド)のバリエーションのひとつだと思って下さい。
鳥かごだと、5対2、つまり5人がオフェンスで2人がデフェンスだと、オフェンスが強すぎなので持ち続けて当たり前という話になってしまいます。
なので、同数チームでのゲームで練習する「ポゼッション」を行います。
ボールポゼッションゲームのポイントとは?
例えば、30m四方のエリア(グリッドとも言います)で4人対4人で行うとします。30m四方のエリアに8人がいる状況ですね。
ポゼッションということは保持なのですが、これを「パス回ししよう」と言って指導してしまうと、ひとりで踏ん張ってキープ出来る場面でも簡単にパスに逃げようとします。
5対2の鳥かごではドリブルの場面はありませんが、同数でのポゼッションではパスコースが無い場合はドリブルして相手を外す必要があります。
ポゼッションのポイントは、ボールを持っている人ではなく、ボールを持っていない人の動きです。
4対4という同数なので、マンツーマンでマークされた状態でボールを受けるためにはボールを持っていない3人がマークを振り切ってスペースに動く必要があります。
- ボールをもらえる位置に動くこと
- 止まった状態でボールを受けない
- パスしたら次にもらえる場所に移動する
- マークされている味方へのパスは×
- 出す所が無い時はキープ(味方がサポートする)
自分のところで奪われたくないので、苦し紛れに味方に出すパスは、味方も苦しくなります。自分が頑張ってマークを外して味方が楽に受けることが出来るパスを出せるように頑張りましょう
レベルに合わせてコーディネートしよう
このポゼッションの練習は、ボールを持っている選手の技術とボールを奪おうとする選手の技術勝負なので、同数ではバランスが崩れることがあります。
つまり、実力差があるような場合は人数を同数ではなく、バランスがとれるように増やしてもよいということです。
また、エリア(グリッド)を狭くするとボールが回りにくく、守備が有利になりますし、広くするとパスが回りやすくなり、守備が辛くなります。
人数と広さを変えて練習することが出来るということですが、僕はエリアを制限しないでやることもあります。
というのは、エリアから出た時に練習が止まってしまうからです。グラウンドを広く使える時には、エリア無しで行います。練習方法が分かっている子供たちは、パスがつながる大きさをキープしますので、無茶に広がることも無いようです。
この練習方法の詳細も次の記事で詳しく説明しますね。
3つの練習方法のまとめ
止める蹴る、対人プレー、ポゼッション。基本となる3つの練習方法について説明しました。この中にはシュートもなければゴールキーパートレーニングもありません。
しかし、止める蹴るが出来ればシュートが打てますし、対人プレーとポゼッションで守備を経験すれば相手のボールを奪うことが出来ます。つまりシュートを打たせないことができます。
試合での勝率を上げたいならば、せめてこのような練習で基本を身に着けてから試合に臨んではどうかと思います。
小学生のサッカーでは、ボール扱いが未熟なのでどうしてもボールに集まってしまう傾向があります。
しかし、パスがつながるようになり、ドリブルでボールが持てるようになるとグラウンドを広くつかったり、ボールを持っていない選手が考えて位置取り、ポジショニングするようになります。
サッカーの練習はいろいろたくさんありますが、毎回の練習にこの中の2番目、3番目は必ず入れてみてください。この練習の上達具合を観察していくことで子供たちとチームの力が伸びていく目安になるはずです。
焦点を絞ること=フォーカスすること=欲張らない
今回のテーマは練習方法を3つに絞ったらという仮定でしたが、練習の目的がハッキリしていれば限られた練習方法を繰り返すことで基本が身についていくと思います。
元日本代表監督のオシム氏は代表監督の頃に、合宿では毎日日替わりのメニューを行っていました。これは選手に毎回のトレーニングで「考えること」をテーマにしていたからです。
しかし、この練習方法の表面だけを見た当時の指導者には、日替わりメニューがよいことなので、小学生も日替わりメニューにすべきだという方がいたものです。
子供たちのための情報収集は、時にはコーチの目移りによる情報過多を招きかねません。
整理されない情報で指導することを「ランダムコーチング」「ランダムコンプレイン(混乱)」と言って、よくないコーチングの例となります。
基礎、基本を身につけるためには練習方法を理解することが大切です。そして
焦点を絞ることです。
あれもこれもやりたい=あれもこれも身につかない
足元の技術もおぼつかない状態なのに、考えることも一緒にやるということは「消化不良」の原因になります。
練習の目的をはっきりさせること。
僕も毎回の練習で意識していることです。頑張りましょうね。
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